食品ロスを考える③ ワケあり食品の再流通で食品ロス削減に取り組むエコロマルシェ
TIPSが『SDGs・ダイバーシティ』をテーマに自ら取材し、発信するWEBメディア RECT。第一弾は、ウェブ広告を使って食品ロスを減らす仕組みをつくる『Freeat』と連携し、SDGs 12を中心に複数のターゲットと深くかかわる『食品ロス問題』をテーマに、Freeatの仕組みとサービスや、食品の再流通に取り組むお店、量り売りで余分な買い物防止に取り組むお店を取り上げます。第3回では、Freeat導入店舗のひとつ、ワケあり食品の再流通で食品ロス削減に取り組む『エコロマルシェ』について、お店の概要と代表 尾形祐介氏へのインタビューをお届けします。
■ エコロマルシェ とは
エコロマルシェは、東京都北区、JR埼京線の浮間舟渡駅のそばにある、食品ロス削減を目指すフードリカバリーショップです。2019年11月にオープンし、様々な事情や基準によって、国内で消費者に届くことのなく廃棄されてしまう、まだ食べられる「ワケあり商品」を再流通させることで、食品ロス削減に取り組んでいます。私たち消費者(お客さん)にとっては、エコロマルシェではスーパーマーケットやコンビニと比べて安く商品を購入できるだけでなく、エコロマルシェで商品を買うことが社会貢献に繋がるというメリットがあります。お客さんは中高年の方が多く、駅から近いため、“ついで買い”のために利用する地元のリピーターが多いそう。
■ 知っていますか?「賞味期限」と「消費期限」
食品に表示されている「賞味期限」と「消費期限」。同じように見えますが、実は全く違います。正しく知れば、食品ロスの削減に貢献できます。
消費期限を過ぎたら食品の品質が劣化するため食べない方がよい一方で、賞味期限はおいしく食べられる目安なので、期限が過ぎても食べられなくなるわけではありません。賞味期限は、試験や評価に基づいて設定され、さらに安全のために開発段階に設定される期間の7割程度の期間まで短くしたものが表示されています。賞味期限が少し過ぎても、すぐに食品を捨てないようにしましょう。
― 小売業界の「3分の1ルール」
小売業界には、製造日から賞味期限までの最初の3分の1の期間中に出荷できなければその時点で処分、次の3分の1で販売できなければ返品・処分となる暗黙のルールがあるそうです。つまり、賞味期限が過ぎても食べられなくなるわけではないのに、賞味期限まで残りの3分の1あるいは3分の2の期間を残して食品が廃棄されている現状があるのです。エコロマルシェでは、これらの廃棄を阻止するために、賞味期限が迫った食品を買い取って店頭に並べています。
― エコロマルシェの値札
エコロマルシェの商品につけられている値札には3つの種類があり、赤は賞味期限が切れているもの(まだ食べられることは確認済み)、黄色は賞味期限が迫っているもの、青は賞味期限以外のワケあり商品です。
■ インタビュー エコロマルシェ代表 尾形祐介氏
TIPSメンバーの小山田が、同店の代表である尾形氏に、エコロマルシェを立ち上げた経緯や運営の仕組み、Freeatの導入理由などについて、徹底インタビューしました!
Q. エコロマルシェってどんなお店?
エコロマルシェは、メーカーや問屋(卸売業)、スーパーマーケット(小売業)などに働きかけ、通常の流通から漏れてしまった食品などを買い取って “再流通”させる『ワケあり食品専門店』です。まだ食べられるにも関わらず、様々な理由で廃棄されそうな食品を回収して販売することにより廃棄を阻止し、少しでも多くの消費者の方に食べていただくことを目的として活動しています。
Q. エコロマルシェを始めたきっかけは?
前職で、レストランやケータリングに携わっていた頃、何の疑問も持たず黙々と料理を捨て続けることに罪悪感をおぼえ、ふと「このままこれを続けていていいのだろうか」と疑問を持ったことがきっかけで、食品ロスの問題に関心を持ち始めました。世界で広がっているムーブメントに感化され、「自分が行動を起こさなくては」と思い、エコロマルシェを立ち上げました。
Q. お店はどのように運営している?
お店で売っている食品は、主に二次問屋※から仕入れています。今日も横浜まで車で仕入れに行ってきました。また、問屋だけでなく、食品や飲料を扱っている企業や、賞味期限の近い災害備蓄品を抱えている地方自治体からも、廃棄を余儀なくされた食品が送られてきます。このような食品は、廃棄をするのにも多大な手間とコストがかかるため、企業や自治体にとってもメリットのある取引です。このように仕入れた食品に、状態ごとに色分けした値札を付けて販売しています。
※一次問屋はメーカーが商品を流通する際一番最初に取引する業者のこと。 一次問屋は二次問屋(場合によってはさらに三次問屋)を通じて小売店に商品を流通させるのが一般的である。
Q. エコロマルシェのこだわりは?
「なんとかして食べ物を救おう」という気持ちでお店を運営していますが、「エコロマルシェでロスを出さないこと」と「お客さんに価値観を押し付けないこと」の2つにはこだわっています。エコロマルシェがオープンしてから1年余りが経ちますが、ロスは1つも出ていません。一種類の商品の仕入れは一度に10~20個程度に絞り、ロスが出ない仕組みにしています。大量に入荷した商品であっても最終的には完売しますし、廃棄直前の場合はお客様に配ることもあります。価値観を押し付けないというのは、お客さんがたとえ食品ロス問題を特に意識をしていなくても、エコロマルシェで買い物をしてくれるだけで貢献になるからです。食品ロス問題をアピールしても、日々の生活で自分事として意識する機会があるとは限りません。私自身が行動を起こし、場をつくることで、利用してくださる方々が「意識しなくても食品ロス削減に貢献できる」仕組みを提供できたらと思っています。
Q. これまで苦労したことは?
イチからのスタートだったので、はじめは人や仕入先とのつながりがどうしても限られていて商品が揃わなかったり、個人事業主ということもあり相手にしてくれない事業所があったりといったことがありました。食品ロスについても、さまざまな人や本に触れながら、経験の中で学んでいく手探り状態で大変苦労しました。それでも、身近な東京都内や埼玉県内に企業のプロジェクトとして似たようなコンセプトのお店をやっているところを見つけて、アポイントを取ってノウハウを教えてもらいに行くなど、積極的に活動を続けてきました。食品ロスを自分の手で救いたいという気持ちで動いてきました。
Q. Freeatを導入した理由は?
一般的に、商売は類似のサービス同士が競合しながら高めあうイメージですが、食品ロスの削減はムーブメントの拡大という共通目標を掲げたうえで、類似サービス間で協力しあうことが求められると思います。食品ロスに真剣に取り組んでいる方とはどんどん協力するスタンスなので、Freeatのファウンダーである古嶋さんのお話を聞いて、力になれるのであればと導入することを決めました。
Q. 今後の展望は?
今後は「フードリカバリープロジェクト」の規模拡大を目標にしています。オープン以来、エコロマルシェは多くの方々にご協力いただきながら単独で活動してきましたが、その中で共感してくださった方々と共にこのプロジェクトを立ち上げ、チームとしてより一層活動を広げることになりました。現在、プロジェクト運営には3社が参画していますが、拠点を全国に広げることで、現時点では対応しきれないケースやエリアをカバーできるように出来たらと思っています。また、運営側が増えればグループとして注目されるようになり、より人々の関心が高まります。SDGs 12の目標3「2030年までに食品廃棄物を半減させる」という目標達成のためにも、より活動の範囲を広げていけたいと思います。
Q. 最後に、学生にメッセージを!
私が若い頃は、食品ロスという言葉はありませんでした。今は、幸か不幸か世界全体でフードロスに対する意識が高まっていて、今の学生さんは私の世代にはなかった食品ロスについて深く知る機会があります。それをチャンスと捉えて、今のような食べ物を大量に廃棄する状態が続いて、食べ物が貴重になる世の中が来てしまう前に、自分ごととして行動を起こしてほしい、自分たちが社会をつくっていく自覚を持ってほしいと思っています。日々のちょっとした意識を変えるだけで、食べ物を安心して食べられる時代が続くはずです。皆さんの小さなアクションの積み重ねが、この問題を解決します。努力を怠らないで、一緒に未来を作っていって欲しいです。
■ エコロマルシェ お店情報
■ 営業時間:11:00~21:00(日曜定休)
※2/18時点、緊急事態宣言発出の影響のため20時閉店
■ 住 所:東京都北区浮間4-31-9 ラ・メゾン・フルーリーB
■ アクセス:JR埼京線 浮間舟渡駅 徒歩1分
お店は、浮間舟渡駅を出てすぐ、埼京線の線路沿いにあります。浮間舟渡駅は、東洋大学の情報連携学部に加え、この4月からはライフデザイン学部も設置される赤羽台キャンパスの最寄り、JR赤羽駅から2駅4分。お店は赤羽台キャンパスから徒歩30分、自転車で10分の距離です。このほか、白山キャンパスに通う学生が多く暮らす都営三田線の志村坂上、志村三丁目、蓮根、西台の各駅からも徒歩30分圏内。浮間舟渡駅からは高島平や西台、東武練馬方面、舟渡エリアからは志村坂上、本蓮沼、板橋本町、板橋区役所前、池袋方面のバスもあります。日常のお買い物に、ちょっと足を延ばして利用してみてはいかがでしょうか。
■ 今日からはじめる!食品ロス削減
連載の第1回では食品ロスについて、連載の第2回ではFreeatについてまとめ、第4回では、Freeatの実証実験に協力している『HACARI』をご紹介しています。
(Writer:小山田萌佳, 三浦央稀)
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